2017年5月10日に文春文庫より刊行されたアンソロジーです。
奥田英朗さん、窪美澄さん、萩原浩さん、原田ハマさん、中江有里さんという5名の作家さんの短編が収録されています。
個人的には、最後の中江さんの「シャンプー」という作品が、子供の頃に誰もが抱く甘酸っぱい恋心が一番描かれいる気がして好きでした。
魅力的な美貌をもった母親。
まだ子供扱いされてしまう程度の自分。
一度でも大人の男性に好意を寄せたことがある方であれば共感できるのではないでしょうか。
長年連れ添った夫婦についての作品が、萩原さんの「アポロ11号はまだ空を飛んでいるか」、原田さんの「ドライビング・ミス・アンジー」で、それぞれの夫婦のあり方を考えさせられる作品です。
大切な人が、先に亡くなってしまうかもしれない状況に立たされたら。
また、先に亡くなってしまったら。
自分はどんな風に相手を支えたいと考えるか。そして、その後をどんな風に生活していくのだろう。
一番最初の作品は、奥田さんの「あなたが大好き」。
とてもシンプルなタイトルながら、ほとんどの女性が出くわすと思われる悩みが詰まった作品でした。
大切な相手の夢、出発を応援したりそっと見守ったり、そんな広い心を持てる人間になりたいものです。
また、窪さんの「銀紙色のアンタレス」では、高校生の男の子のひと夏の恋が描かれています。
一目ぼれとはこんな様子のことを言うのだなと、こちらもまた甘酸っぱいような、一瞬を切り取ったような作品です。
世界中、日本中で見ればとても何気ない日々。けれど、作品に描かれているような風に過ごしている方がこの世の中にはたくさんいるのでしょう。
しかし、切り取られた1場面1場面をこんな風に描かれると一気にドラマチックになりますね。
アンソロジーものはそのように感じさせられる作品が多いですし、たくさんの作家さんの作品に触れられるのでたまに手に取ってしまいます。
もしご興味がある方は読んでみてくださいね。