第154回直木賞の候補作 に、また2016年の本屋大賞に選ばれた作品です。
また2018年6月には、山﨑賢人さん主演で映画化がされています。
一言で表すと、とても静かで優しい物語でした。
ピアノの調律師さんの物語です。
主人公は高校時代に、たまたまピアノの調律をしているところに遭遇します。その作業をしている人を調律師ということもその時に初めて知るのです。
ピアノなど触れたことのなかった主人公は、その時に調律されたピアノの音を聞いた瞬間、世界が開けて調律師になることに決めます。
専門の学校に通い、晴れて調理師となってからが話の本筋。
あまり音楽に興味のない方は、もしかしたら淡々と進む物語にやや苦戦して読まれることになるかもしれません。
しかし、この作品はとても不思議で、著者の表現がそうさせるのか音が聞こえてくるようなのです。
恐らく、主人公の音の感じ方が映像となってイメージされているというところにあるのだと思います。
いい調律とはなんなのか?弾きやすいピアノとは?人それぞれ感じ方が違う、正解のない世界。出会う人、調律師によってやり方が違うということも相まって葛藤しながら自分の正解を探していく様子が描かれている作品でした。
嫌味を言う人は登場しますが、嫌な人は登場しない。
この作品の著者は、もしかしたら優しく自分に厳しい方なのかもしれません。
そんなことも感じられる物語でした。