「あなたには、帰る場所がありますか」という帯に惹かれて手に取りました。
舞台は四国の道後。
四国八十八か所を回るお遍路さんも通る道すがらに「さぎのや」というとてもとても温かい場所のお話。
冒頭、とても興味が湧くスリリングな雰囲気で本文は始まります。
一人の少女が、何かから逃げてくる。
逃げて逃げて、もう駄目だと思ったその時
「あなたには、帰る場所がありますか」
そう、優しい声で問われる。
首を横に振った少女は、そこからさぎのやに出会い、様々な経験、人との出会い、過去と向き合っていきます。
部分的に切り取ってしまうと、ただのヒューマン系のストーリーに感じますが、もしもこれを見てくださっている方が何かに疲れているのでしたら、『こういう場所があったらいいな。』『取りあえず明日も頑張ってみようかな』という気持ちになるのではないでしょうか。
お遍路さんなども出てくるという点から、少しファンタジー的というか宗教的な意味合いを持つ表現等もありますが、私は個人的に全体を通して温泉のようにじんわり心が温かくなる物語であったと感じました。
ほんの少しだけでいい。
人にやさしくなれれば、みんな幸せな気持ちになれるのかもしれない。
今、この世界にあってほしい場所。
そんな気持ちにさせられる本です。
四国の風景が浮かぶような描写も印象的なのですが、著者の地元なのだそうです。
田舎の風景というのは不思議なもので、 誰が見てもホッとする感じがしますよね 、住むとなると不便も多いでしょうが。
2019年10月の頭に発売されたばかりです。
もしご興味のある方はぜひ。